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経済

タイで「恨み」買う住友商事

発電所「作り逃げ」に非難囂々

2013年4月号

 今年二月、タイ・バンコク首都圏にあるタイ発電公社(EGAT)の入札室。国内最大規模となる火力発電所「ノースバンコク複合火力発電所2号機」の建設請負契約で、日本の住友商事とフランスのアルストムのコンソーシアムが落札した。その瞬間を間近で見ていたEGATの職員の一人は、傍らにいた上司の幹部が苦虫を?み潰したかのような硬い表情でいたのを忘れることができない。「また、作るだけ作って後のことは知らないよ、ということにならなければいいが……」。幹部の胸の内を部下の職員はこう代弁してみせた。  住商が落札した請負契約は、バンコク近郊ノンタブリ県にあるEGAT本社内の敷地に、天然ガスを燃料とする総出力約八百五十メガワットの火力発電施設を建設するというもの。二〇一六年一月に完工予定で、完成すればタイ国内最大級の供給能力を持つ火力発電所となり、バンコク首都圏二百万人分の電力需要を満たすことになる。経済成長が続き電力消費量が増大しているタイにとって必要不可欠なインフラ整備として、決して失敗の許されないビッグプロジェクトであった。それを落札した住商に対し、EGATの幹部が示した不快感―、背景にはタイ国・・・