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経済

《企業研究 》日本たばこ産業(JT)

「発がん物質」で稼ぐ企業の限界

2013年4月号

 果たして完全民営化へ向けての一里塚となるのか。政府・財務省が三月十五日、保有する日本たばこ産業(JT)株の九年ぶり一部売却に踏み切った。国内外の一般投資家に対し、約二億五千三百二十六万株を一株当たり二千九百四十九円で売り出したもので、これによりJTが二月末に実施した約八千七万株の自己株取得分と合わせて発行株のおよそ一六%、計約三億三千三百三十三万株が放出されたことになる。政府出資比率は実質的に経営支配が可能となるこれまでの五〇・〇一%から、株主総会の特別決議における拒否権を持つだけにとどまる三三・三%超にまで低下した格好だ。

 JT株に関しては、震災復興財源に充てるための措置として政府の二分の一保有を義務付けた日本たばこ産業株式会社法を改正する形で二〇一一年十二月に売り出し方針が決められていた。ただ、前政権によるJAL再上場優先策の煽りを食らい、当初予定していた一二年九月実施が先送りに。そのうえ厚生労働省が一三年度税制改正要望でたばこ増税を俎上に載せてきたことで売り出しに必要な目論見書の作成作業などがストップ、財務省内では一時、一二年度内実施すら危ぶむ声も・・・