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エジプトは「破綻国家」となるか

新たな「革命劇」への不穏な胎動

2013年5月号

「エジプトは国民にパンを買う金もなくしつつあり、危険水準を越えて『破綻国家』への仲間入りが間近に迫っている。そうなれば中東全体が不安定化する」  これはピュリツァー賞を三回受賞しているニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマンが四月に書いたコラムの中に見える一節だ。フリードマンが言いたかったのは、欧米、特に米国が無為無策の数年間を過ごしているうちに、世界各地で問題が噴出し、手が付けられなくなっているということである。彼の言う問題とはイランや北朝鮮の核に始まり、シリアやキプロスの危機も含んでおり、エジプトだけをことさら取り上げたわけではなかった。しかし、同胞団支配に反発する世俗・リベラル派はこの専門家が発した「破綻国家」という衝撃的な言葉に飛びつき、これを政権攻撃の格好の材料とした。  ちなみに「パンを買う金もない」というのは本当である。エジプトではパンの代金の過半を払うのは消費者ではない。その大部分が政府補助金なので、文字どおり政府は国民にパンを買い与えているのだが、世界一安いと言われるパンの公定価格を一円でも上げようものなら、即暴動、となる。しかし、・・・