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経済

米自動車産業を 買い漁る中国

日本勢にも静かに迫る「脅威」

2013年5月号

「A123の技術をさらに発展させることを楽しみにしている」  中国万向(ワンシャン)集団米国法人の倪頻(ピン・ニ)社長は歓喜の中でこう述べた。米外国投資委員会(CFIUS)が一月、ついに「中国万向集団による米燃料電池ベンチャーA123システムズ買収」許可を決定したのだ。同氏は米中間の様々な政治的障壁を乗り越えて、最新のリチウムイオン電池技術を手中に収めたのである。習近平、胡錦濤、オバマ、バイデン、ガイトナー……、これら国際政治のビッグネームと人脈を持つ万向とは、一体、何者なのか。  そして、手を替え品を替え、世界の自動車産業を買い漁り始めた中国。それは思いもよらない方向から静かに忍び寄る、日本の自動車産業の大きな「脅威」にほかならない。

米政府を説得してA123を取得

 万向集団。中国杭州市に拠点を置く同社は一九六九年に設立された民族系自動車部品最大手企業だ。早くから輸出に乗り出し、海外進出にも成功、中国の「民間多国籍企業」として知られる存在だ。会長の魯冠球氏(四五年生まれ)は資産三十一億ドル、フォーブス世界ランク四百三十七位の富豪だ。「・・・