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「汚職摘発」の嵐吹き荒れる中国

腐敗根絶に名を借りた「権力闘争」

2013年8月号

 北京の中国共産党中枢部で再び権力闘争の嵐が吹き始めている。汚職、腐敗打倒の告発が奨励され、社会全体の空気が荒れてくるにつれ、階級闘争に明け暮れた毛沢東時代を知る世代は「文革もどきだ」と怯える。  三月、国家主席に就任した習近平党総書記が、党幹部の腐敗根絶を叫んで、繰り返し「整風」(党風刷新)の大号令をかけている。党や軍に対する権力掌握を狙っていることは明らかだ。  習近平は「形式主義、官僚主義、享楽主義、ぜいたく」の「四つの風潮」を許さないという厳命を出している。中央でも地方でも、山海の珍味と高級酒の並ぶ公費宴会がぱたりと姿を消し、それが国内総生産(GDP)を押し下げる要因になっているほどだ。  軍幹部は公用車として大型四輪駆動車の高級モデルを購入し私用で乗り回すことが禁じられた。「賄賂をとっている」「ぜいたくな高級時計をしている」「愛人がいる」などとネット上に密告され、血祭りにされるのではないかと上から下まで戦々恐々の日々を送っている。腐敗やぜいたくと無縁な中国共産党の幹部などほとんどいない。  だが、整風運動に名を借りて、反対派を倒す権力闘争の実態が早くも・・・