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社会・文化

山岳紅葉「高原逍遥」への招待

八幡平と北アルプスの魅力

2013年9月号

 日本中を熱風が包んだかのような盛夏は終わったが、いまだ残暑は続いている。しかし早くも九月に入れば、北海道の山岳地帯では木の葉が色づきだす。大雪山系の鮮烈な紅葉は見る者の心を奪うが、名所は北海道だけではない。  四季折々さまざまな彩りを見せる北奥羽の名峰の一つである八幡平。近隣の十和田湖や八甲田山にも劣らない紅葉の景勝地として知られている。  八幡平は湿原と草原、ブナやアオモリトドマツなど多量の積雪によって育てられた独特の植生が自然の楽園を形成する高原だ。「アスピーテ式火山」と呼ばれる盾を伏せたような平らかな形状は、隣り合う岩手山とは全く違う趣を持つ。特に山頂周辺に広がる多くの湿地によって、特徴的な風景を作っている。また、高緯度に位置するため、自然環境は三〇〇〇メートルクラスの山々にも匹敵するのだ。 「アスピーテライン」と名付けられた道路のお蔭で山頂周辺へのアプローチは容易で、秋田と岩手の県境の見返り峠から、山また山の広々としたパノラマが四方に広がっている。  八幡平はどこを切り取っても美しい光景に出合える。もちろん、全山同時というわけにはいかず、山麓から中腹、・・・