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連載

西風 389

ビジョンなき政争が終わった

2013年10月号


 すでに堺市長選挙の結果は出ているが、竹山修身氏と日本維新の会の対立は「都構想」が争点になりながら、最後まで敵陣営の攻撃に終始して「ビジョン」が語られることはなかった。

 市長選告示を三週間後に控えていた八月二十五日、堺市で超低床路面電車「堺トラム」が営業運転を開始した。近畿地方初の低床車両として、全放送局がローカルニュースで取り上げるなど関西では注目を集めた。堺にゆかりのある千利休にちなみ「茶ちゃ」と名付けられた車両は、老人や車椅子利用者も「楽に乗れる」と評判で、来年度までにさらに二編成が導入される予定になっている。

 堺トラムが走るのは大阪市南部と堺市を結ぶ「阪堺電気軌道(阪堺電車)」という南海電鉄の一〇〇%子会社の路線。同社は馬車鉄道をルーツに持つ日本でも有数の老舗鉄道だ。
「LRTの話題を両陣営とも意識的に避けた」
 在阪社会部記者はこう語る。LRT(ライト・レール・トランジット)は欧州などで多用されていることで知られる都市交通の切り札。一般の路面電車との違いは、路面以外の地下や高架区間があり、より長距・・・