三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

遠ざかるミャンマー和平

少数民族「テロ戦争」は終わらない

2013年11月号

 民主化への道を進むミャンマーには、各国からの投資が集まりだし日本企業も我先にと進出を模索しているが、歪みも露呈している。ここにきてこの国の最大のネックである少数民族問題が新たな局面を迎えている。  十月十四日、商都ヤンゴン中心部のトレーダースホテルで発生した爆弾テロ事件は、政府に衝撃を与えた。小型の手製爆弾によりアメリカ人女性観光客が負傷しただけで済んだように見えるが、話はそう単純ではない。 「少数民族の跳ね返りが、新しいテロ戦争を仕掛け始めた」  現地紙記者の一人はこう解説する。ミャンマー国内、特にヤンゴンではこれまでも爆弾事件が散発的に起きていた。特に、二〇一一年からの民主化の動きが始まる前には、市内の繁華街などで小規模爆弾が破裂していた。大抵の場合、容疑者は捕まらず、また当時は報道への規制もあったために続報もない。おそらくほとんどの事件が少数民族によるテロであるが、政府による発表も、武装勢力による犯行声明もないまま、市民も過去のものとして処理してきた。 反政府勢力内の分裂 「今回の事件は、外国人をターゲットとしたもの。民主化プロセ・・・