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連載

日本の科学アラカルト40

究極の量子コンピューターに 向けた素粒子研究の前進

2013年12月号


 素粒子研究は、物質の根源に挑む営みだ。科学(化学)が進歩するたびに、物質を構成する物体のサイズは分子、原子、中性子、陽子、電子と小さくなってきた。素粒子は、宇宙に存在するすべての物質の究極の源であると現時点では考えられている。

 今年、ノーベル物理学賞を受賞したピーター・ヒッグス氏が提唱し、日本の研究チームなども加わって発見された「ヒッグス粒子」も素粒子の一つ。他の素粒子に質量を与える役目を持っている。

 素粒子の研究は純粋な基礎科学に分類され、一般の科学技術への寄与はあまり生じない。しかし、昨年同じくノーベル物理学賞を受賞した、セルジュ・アロシュ博士、デビッド・ワインランド博士らは、素粒子を用いる量子コンピューターの実現に寄与する研究を行ったことで知られている。

 量子コンピューターは、素粒子研究が一つの技術として、世界を一変させる可能性を秘めるものとして、世界中で研究が進んでいる。

 もっとも有名な素粒子である「光子(フォトン)」を使った究極の計算機が「光コンピューター」だ。{br・・・