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中東「領土大分裂」が始まった

宗教と人種が書き換える「国境線」

2014年1月号

 動乱が続く中東・北アフリカで国家の液状化が進み、歴史的な地図の書き換えが始まった。度重なる戦争と、アラブの春を経た紛争により、広大な地域で従来の国境が意味を失い、宗派や民族、有力部族を核にした新たな政体が、続々と生まれ始めている。  アラブの政治地図は、第一次世界大戦中の英仏間の秘密協定(サイクス=ピコ協定)や、欧州帝国主義の人為的境界線を起源としているが、新たな境界線は、民族分布、部族の勢力版図やシーア派、スンニ派の棲み分けといった、住民の生活実態に即した形で引き直されており、オスマン帝国時代の行政区分に逆戻りしている。一方で、サウジアラビアなどアラブ産油国では、脆弱な国家基盤を克服するため、「連邦」創設の動きも本格化している。  これだけの地殻変動は当面、大きな振動を伴って続くのは間違いなく、日米欧は長期的な戦略が必要になっている。 最も衝撃が強い「クルド人国家」  ベルリンと中東を鉄道で結ぼうという「バグダッド鉄道」は、ドイツ帝国の皇帝(カイザー)、ヴィルヘルム二世の壮大な構想だった。当時、イスタンブールからバグダッドまではすべ・・・