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連載

追想 バテレンの世紀 連載94

元和の大殉教と相次ぐ禁令
渡辺 京二

2014年1月号


 ズニガ神父が司牧していた日本のキリシタンは、神父宛にとり残された自分たちの窮状を訴え、宣教師の派遣を懇請した。フィリピンのアウグスティノ会は、ズニガを再入国させることを決めた。ズニガは長崎で知れ渡っている自分は、着いてもすぐ捕縛されるだろうと難色を示したが、信徒たちが安全を保証したので、やむなく日本行を引き受け、ルイス・フローレス神父も同行することになった。

 折しもマニラで交易に従事していた平山常陳が、店をたたんで帰国しようとしていた。常陳は堺生まれのキリシタンで、ズニガとフローレスは常陳が仕立てた船に乗り込むことができた。

 一六二〇年七月、平山船は台湾海域で英船エリザベスに捕えられた。英蘭両国は一六一九年防御同盟を結び、それぞれ五隻の船を出して平戸に根拠を置く一艦隊を組織し、マカオから来るポルトガル船、およびマニラへ向かう中国船を捕獲することにした。平山船はマニラ向けの中国船を監視する英船にひっかかったのである。

 平山船は日本人の船であるから、捕獲の対象にはならない。しかし、臨検した英人は船底の鹿皮・・・