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連載

日本の科学アラカルト 41

新素材開発の可能性も持つ発酵工学研究の世界

2014年1月号

 年末年始、アルコールの摂取量が増加する人は多いだろう。ビール、ワイン、ウイスキー、さまざまな酒があるが、特に日本酒がおいしい季節である。世界的にファンが増加していることで知られる「SAKE」は日本独自の醸造技術の賜物だ。

 日本では、酒以外にも味噌や醤油、納豆といった発酵食品が溢れている。このため、発酵学、醸造学といった分野は世界的に見てもレベルが高い。医薬品やバイオエネルギーの開発にも寄与する新たな研究成果が生まれている。

 発酵技術の発展がもっとも期待されているのはバイオ燃料の分野だ。バイオエタノールに代表される、バイオエネルギーは既に実用化の域に達しているが、サトウキビをはじめとする食品を燃料に変換するために、食品市場への影響が懸念され、問題も発生していることはご存じだろう。

 またエネルギー小国である日本にとって、新たなエネルギー源の確保は安全保障上も重要なテーマ。太陽光や風力といった出力の安定しない発電方式と比較した場合、植物などに由来するバイオ燃料はその利便性において圧倒的な優位にある再生可能エネルギーだ。・・・