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経済

サムスンの「下僕」に堕した帝人

「虎の子技術」流出も時間の問題

2014年6月号

「電話があると、すぐにすっ飛んでいくらしい。しかも、“アレ出せ、コレ出せ”と要求されたら技術でもカネでも何でも差し出しそうな従順さが痛々しい」  ある日系電子機器メーカーのソウル駐在員はそうこきおろす。嘲笑されているのは、韓国でリチウムイオン電池(LIB)関連材料を展開する帝人だ。同社は二〇一二年七月から韓国忠清南道のアサン(牙山)市において、韓国有力フィルム加工会社CNF社との合弁によりLIB用セパレータを生産している。蓄電、充電ができる二次電池の一種であるLIB。その正極と負極を仕切る隔膜であるセパレータは、電池性能を直接的に左右する中核材料にほかならない。  そのセパレータは、優れた材料技術を保持する日本勢がいまだ世界市場の約四割を占め、優位な立場にある。中でも帝人は、世界で初めてポリエチレン基材にメタ系アラミドやフッ素系化合物をコーティングすることで、耐熱性や電極との易接着性など業界随一の高性能を発揮。電池メーカーがこぞって採用を競う「虎の子」の看板製品でもある。電池メーカー各社は現在、将来の主戦場となる電気自動車市場の立ち上がりを見据え、LIBの大容量化、高性能化・・・