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半島有事で見捨てられる「在韓邦人」

極秘の退避計画が示す「孤立無援」

2014年7月号

「日本の近隣で紛争が発生し、避難する邦人の命が危険にさらされるときに政府が何もできなくていいのか。内閣総理大臣として国民の命と平和な暮らしを守る責任を負っている」。六月五日、ベルギーのブリュッセルで行った記者会見で、安倍晋三首相はこう力を込めた。集団的自衛権への国民世論の理解を得るため、「日本人の生命保護」を強調するのは、五月十五日の記者会見で使った論法と同じだ。安倍首相はこの時、集団的自衛権の行使が必要とされる事例として、日本近海で日本人を運ぶ米国の輸送艦を自衛隊の艦船が守る姿をパネルで表現。「この米国船を日本の自衛隊は守ることができない」と訴えた。  だが、根本的な問題がある。「そもそも、日本人が米国の輸送艦に乗ることができるのか」(全国紙外交担当記者)という問題だ。 自力で南部を目指すしかない  今、邦人退避計画の必要性が最も叫ばれているのが、朝鮮半島有事だ。二〇一一年十二月の金正日総書記死去以来、政治的不安定と経済的困窮が進む北朝鮮。死去後、すでに弾道ミサイル発射を三回、核実験を一回行い、常に軍事挑発の構えを崩していない。  一方、海外在留・・・