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連載

本に遇う 連載 176

「堪ヘ難キヲ堪ヘ……」
河谷 史夫

2014年8月号

「花子とアン」が好調という。「朝の連続ドラマ評論家」としては一言触れずばなるまい。

 今回の主人公は、鈍感で無責任、他人にはどうでもいいようなことに固執し続けるという性格を付与されているのが特徴だ。

 まず自分の名前が「はな」なのが不満だ。「花子」でないといけない。「子をつけて呼べ」と誰にでも迫る執着が異常である。「パルピテーション(ときめき)」にもこだわる。結婚相手にはそれを感じなければならない。好青年である大地主の倅に見初められるが、返事をしない。彼が理由を聞く。すると花子は「今はパルピテーションがない。時間が経てば生まれるかも知れないから、それまで待って欲しい」と言うのだ。待っていればパルピテーションが訪れると思っているらしい。この鈍感さに呆れて、彼のほうから去って行った。

 仕事もいい加減である。担当の校正作業の途中で寝込んでしまい、朝が来て大騒ぎになる。同僚の助けで事なきを得たものの、職業人としては無責任この上もない。

 おはなはんやおしんや糸子や、連ドラはいろんな女性像を並べてきたが、鈍・・・