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WORLD

《世界のキーパーソン》ワレンチン・ナリワイチェンコ (ウクライナ保安庁 (SBU)長官)

反ロシア親米路線の要を担う

2014年8月号

 マレーシア航空機撃墜事件で、世界の耳目を集めるウクライナ。この国の方向性だけでなく、欧州全体の地政学を左右するポストにいるのが、四十八歳のナリワイチェンコである。

 旧ソ連の国々の権力構造を理解するのは、今も簡単だ。誰が治安・情報機関を握っているか。その機関はどの程度、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)と決別しているか。この二つを見ることで、その国のあり方がおおむね分かる。

 KGBはソ連時代に、十五の民族共和国に支部を持ち、各国の独立後はそれぞれ後継機関の核になった。ロシアと中央アジアでは特に継続性が高く、それぞれ名前を変えつつ役割と機能を高めている。

 ウクライナの場合、保安庁の扱いは常に厄介だった。旧KGBでは、ウクライナ人はロシア人に次いで主要ポストを占めていたため、独立後も保安庁にはソ連色が残り、ロシアの後継機関である連邦保安庁(FSB)や、その究極のボスであるプーチン大統領とのつながりが簡単には消せなかった。

 そこで、今年二月にヤヌコビッチ政権が崩壊した際、最高会議(国会)が最初に任命・・・