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社会・文化

沈みゆく「京都大学」

「ミニ東大化」で個性失う西の雄

2014年9月号

 京都市左京区。吉田山のふもとに広がる京都大学キャンパス。六月下旬、ここに過去に例を見ない異様な光景が広がった。構内の掲示板があるビラで埋め尽くされたのだ。単に大量のアジビラが貼られるだけならいつの時代でもあった。問題はその内容だ。 「山極 投票しないで」  京大では七月三日に総長選が予定されていた。候補者のうちの一人がゴリラ研究の第一人者として知られる前理学研究科長の山極壽一教授だった。ビラは総長選で山極教授に投票しないように呼びかけているが、実は「ネガティブキャンペーン」ではない。工学部の教授の一人は「最初から最後までこれまでにない奇妙な総長選だった」と語り「京大はどこへ行こうとしているのか」とひとりごちた。 「京都学派」と称された学者群を生み出し、多くの自然科学系ノーベル賞受賞者を輩出してきた京都大学が変容している。中には「劣化だ」(理学部教授)との諦観の声さえ聞こえる。 松本学長下で急速に変質  一九一九年(大正八年)、創立二十二年目のこの年、京都帝国大学は日本で初めて総長選を行った。歴史あるこの選挙を廃止する動きが浮上したのは昨年十・・・