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経済

新日鐵住金を蝕む 「覇者の驕り」

製鉄所「事故続発」が示す病巣

2014年10月号

 覇者の驕りか、それとも単なる気の緩みか―。新日鐵住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)で今年に入ってトラブルが頻発し、トヨタ自動車、スズキをはじめとした顧客企業や近隣住民らの顰蹙を買っている。七月までの間に、停電でコークス炉のガスが処理できなくなって周辺に大量の黒煙を撒き散らすといったトラブルが連続四回、さらには石炭を運ぶベルトコンベヤーの火災が一回発生。そして九月三日には、ついに人身事故まで引き起こした。  計四基あるコークス炉の一つ、第一コークス炉そばの石炭貯蔵設備「石炭塔」が爆発炎上、協力会社を含む社員ら十五人が重軽傷を負うという惨事となったのだ。製鉄所側は「石炭塔の中の石炭が通常より二日間長く保存されたことで、その一部が熱を帯びて自然発火した」と説明しているが、詳しい事故原因は不明。十七日には愛知県警が製鉄所側の安全管理体制に問題があった可能性もあるとして、業務上過失傷害の疑いで家宅捜索に踏み切り、事故は事件にまで発展した。今後の捜査の進展次第では酒本義嗣所長ら製鉄所トップの刑事責任すら問われかねないといった局面を迎えたことになる。 抜本的対策は「容易ではない」・・・