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経済

「世界トップ」 ブリヂストンの慢心

社運賭けたベトナム事業で大誤算

2014年12月号

「ベトナムでの事業活動を通じて、ベトナム国、ハイフォン市の経済発展に貢献する」  十月二十四日、ハイフォン市内にあるディンブー工業団地で開かれた式典で、ブリヂストン代表取締役CEO兼取締役会長の津谷正明氏は高らかに宣言した。この日は、既に四月から稼働を始めていたブリヂストン・タイヤ・マニュファクチャリング・ベトナム(BTMV)の工場の開所式だった。晴れの舞台のはずだが、会場の片隅ではBTMV関係者がこう吐き捨てた。「今からでも『ベトナム進出は間違いだった』と役員は反省すべきだ」。二年連続過去最高益を更新する世界一のタイヤメーカーが、ベトナム新事業で大きく躓く可能性が高いというのだ。 売り先のないタイヤを生産  ブリヂストンがなぜベトナムに飛び込んだのかを知るためには、同社の経営環境を知る必要がある。二〇〇〇年に世界シェアの二〇%を押さえていたブリヂストンは、じりじりと後退を続け、一二年にはシェア一五%になり二位の仏ミシュランに肩を並べられている。最大の原因は、中国をはじめとする新興国が廉価なタイヤを生産し始めたことだ。高度技術の結晶であるスマートフォンで・・・