三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

欧州で広がる「イスラム無法地帯」

各国で先鋭化する人種・宗教対立

2014年12月号

 イスラム教徒の移民が多いヨーロッパ各国で、都市部のイスラム系住民地区が自警団を組織したり、司法制度の枠外で独自に「裁判」を行ったりする、無法地帯が増えている。  世界各地でイスラム過激派が台頭する中で、「イスラム地区」は、地元白人や公共機関にとって「ノー・ゴー・エリア(危険地帯)」になっているばかりか、青年たちを洗脳し、リクルートする「テロリスト予備軍」の温床にもなっている。長引く経済危機で、イスラム地区では政治・社会への不満が高まっており、各国治安当局は監視を強める以外に有効な対策を持っていないのが現状だ。 ロンドンに「イスラム共和国」  ベルギーの港町アントワープは、ルーベンスの大作がある大聖堂で名高い。この古都のユダヤ人地区には、欧州最大のダイヤモンド産業があり、年間五兆円以上をたたき出す。  十一月中旬、ユダヤ人地区にあるシナゴーグの近くで、三十一歳のラビ(ユダヤ教指導者)が背後から何者かに襲われて、首に大けがを負う事件があった。  欧州のユダヤ人団体は一斉に、ベルギー国内のイスラム過激派に疑いの目を向けた。アントワープでは・・・