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「スエズ運河」に迫るイランの脅威

シーア派勢力がイエメン掌握へ

2014年12月号

 米国や世界の関心がイスラム国(IS)に向く中、中東で新たな脅威が台頭している。破綻国家イエメンでイランの息のかかったシーア派過激派が伸長し、紅海の物流が危機に直面することで中東だけでなく、世界経済にも影響を与えそうだ。  イエメンで「イランの別動隊」が主導権を掌握したのは九月下旬。アラビア半島西端の同国では近年、国際テロ組織アルカーイダが跋扈してきたが、イスラム教シーア派系の少数派であるザイド派に属するホーシー派民兵が九月二十一日に首都サヌアを制圧した。同派を影響下に置くイランが、スンニ派の盟主であるサウジアラビアの裏庭に土足で踏み込んだ格好だ。 「バグダッド、ベイルート、ダマスカスに続き、四つ目の首都を支配下に入れた」  イランの最高指導者ハメネイ師に近いアリ・レザ・ザカニ議員は、ホーシー派のサヌア制圧を受けて、こう気炎を上げた。挙げられた三つの都市は、イラク、レバノン、シリアの首都に他ならない。イラクではシーア派政権が実権を握り、シリアではイランが支援するアサド大統領が健在、レバノンではやはりシーア派過激派「ヒズボラ」が影響力を行使している。これに続いてイエメン・・・