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イスラム過激派「退潮」の一年

支持を失った「大義なき聖戦」

2015年1月号

 イスラム過激主義が嫌われている。欧米ではない。中東で、そしてイスラム世界において、の話だ。それは近年、徐々に進行している現象であったが「イスラム国」の出現以降、特に顕著になってきた。「斬首」や異教徒の迫害・凌辱、集団処刑といった行為がイスラムの名において行われていることへの当然の反動であろう。  十二月中旬、パキスタンのペシャワルでパキスタン・タリバン運動(TTP)が起こした軍付属学校襲撃事件の直後には、子供を標的としたあまりに惨たらしい蛮行に非難が集中し、「本家」(アフガニスタン)のタリバン報道官に「罪のない民、婦女子を意図的に殺害する行為はイスラムの教えに反する」との烙印を押される始末であった。その前日にはシドニーのカフェで「イスラム国メンバーではない」イスラム教徒による人質立て籠もり事件が発生した。直後、電車内でイスラム教徒と悟られたくない女性がスカーフを脱ごうとしたところ、居合わせた乗客が「私があなたと一緒に歩く」と抱擁し、優しく押しとどめたという美談がSNSで人気を博すほど、イスラム世界が受けている負のイメージは深刻だ。 「寛容こそイスラムが誇る美徳では・・・