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連載

西風 404

神戸名物「潜水艦」は海を渡るか

2015年1月号

 慶應三年(一八六八年)に開港した歴史ある神戸港。百五十年近くが経過した今もこの港は中枢港湾であると同時に、洒落た街神戸の象徴になっている。阪神工業地帯の一角を占める神戸港は、実は日本で唯一の潜水艦製造拠点という顔を持っている。神戸港中心部に三キロほどの距離を置いて、川崎重工業神戸工場と三菱重工業神戸造船所がある。海上自衛隊で運用されているすべての潜水艦が、この二つの工場で建造されてきた。  神戸の潜水艦建造の歴史は戦前からで、呉や佐世保の海軍工廠だけでなく伊号第一九潜水艦などは三菱の神戸造船所で建造されていた。敗戦をきっかけに一度その歴史は止まるが、一九五六年に再び動き出す。この二年前に警備隊から自衛隊となった海自は防衛力強化のために潜水艦配備を望んでいた。当然ながら日本の軍備が必要以上に増強されることを米国が警戒していたためにすぐには認められなかった。そのため海自は五四年ごろから訓練目標となる潜水艦の国内建造を計画。五六年予算で排水量一千トンの潜水艦建造が認められた。翌年に神戸の川崎重工で建造が始まり、五九年に「おやしお」と名付けられた戦後初の国産潜水艦が進水した。  ・・・