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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》野放しの「精神障害者殺人」

被害者「殺され損」の狂った社会

2015年4月号

 大切な家族を突然失う悲しみの大きさに差はない。病死、事故死、殺人、自殺、災害死。どれも残された人間の気持ちは同じだろう。ただ、同じ事故死であっても自ら引き起こしたものと、飲酒運転による無謀運転によって轢き殺されたのでは怒りという要素が加わるだけに違いはある。あらゆる人の死の現場を歩いてきた警視庁の捜査一課の刑事が語る。

「どんな事件、事故よりやりきれないのは、キチガイに殺された場合。家族が奪われ、犯人がいるのにもかかわらず刑事罰は与えられない。刑事も無力感に襲われる」

 精神異常を来した人間による殺人事件は毎年百件以上起きている。放火や強姦、強盗、傷害事件を含めると四百件近くの凶悪事件が発生し、その大部分が不起訴処分となっている。都内の病院に勤務し犯罪者の精神鑑定を行った経験を持つ精神科医は語る。

「ほとんどすべての事件が防げたはずだ。どうにも救いようのない事件が起き続ける状況をこの国は放置してきた」

 理不尽な事件を止められない責任の所在はどこにあるのか。


「厄介者」を後回しにする保健師・・・