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「女」がカギ握る中国権力闘争

汚職摘発で標的になる「妻・愛人」

2015年4月号

 たった一枚の写真が中国内外に大きな波紋を広げている。寂しげに微笑む軍服の女性―。名前は宋祖英、四十八歳になる国民的歌手であり人民解放軍海軍政治部歌舞団団長、階級は少将だ。かつての最高権力者、江沢民の愛人として知らぬ者はいないが、表立って話題とすること自体がタブーだ。男女関係の話題であるため、日本の新聞の記事でお目にかかることもない。宋の「孤立」は、写真流出の経緯も含めて江沢民の影響力低下の象徴といわれている。  そもそも「超男社会」である中国では、女性が権力の表舞台に立つことはない。しかし一方で、権力者の「女」はパワーバランスのバロメーターとなる。ここで言う女とは、妻であり愛人だ。特に権力闘争が激化してくると、女は追い落としのためのターゲットとなる。数年前から始まった汚職摘発でも権力者の女は情け容赦のない追及を受けている。 消息不明となる「愛人」たち 「四匹目の虎」といわれ、昨年末に摘発された令計画の失脚劇は、最初から最後まで「女」が主役だった。  胡錦濤の右腕と呼ばれた令の躓きは、前政権時代の二〇一二年三月に起きた息子の交通事故だった。北京市内・・・