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連載

誤審のスポーツ史 05

「中東の笛」が炙り出した国民性
中村 計

2015年5月号

 つくづく従順な国民性なのだと感じた。

 二〇〇八年の北京五輪ハンドボール・アジア予選のやり直しで、中東びいきの判定、いわゆる「中東の笛」の存在が明るみになったとき、ある外国人がこんなことを書いていた。

「不正が行われていたことよりも、これだけ長い間、不正が見過ごされてきたことの方が驚きだ」

 中東勢に有利なジャッジが繰り返されるようになったのは、一九九〇年代に入ってからのことだ。クウェートやバーレーンといった潤沢なオイルマネーを持つ中東勢がアジアハンドボール連盟(AHF)を牛耳るようになり、試合直前にAHFの息がかかった審判員に変更されるといった横暴がまかり通るようになった。

 関係者の間では、大会前に大方の順位の予想ができた。そうなるよう組み合わせから操作するのだ。勝たせたい方に有利な笛を吹くのは当たり前で、ときには事前に打ち合わせをしていたにもかかわらず相手と同系色のユニフォームを着ていき、事前の通知を守った方を失格処分にすることもあった。

「中東の笛」という言葉の生みの・・・