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連載

日本の科学アラカルト 57

社会基盤を構成するコンクリート研究

2015年5月号

 都市を構成しているビルや橋梁、地下構造物などありとあらゆる場所で使用される建築材料が「コンクリート」だ。  水、砂、砂利、セメントのどこでも手に入る四つの材料で、安価に堅牢な構造物をつくることができる。歴史は古く、古代エジプト時代には早くもモルタルを使った建設が行われていることが確認できる。現存する最古のコンクリート構造物はローマ遺跡に数多く残されており、遥か二千年も前に建築された浴場や神殿などで使われている。「ローマンコンクリート」と呼ばれる当時のコンクリートは石灰石が用いられ、今もなお耐久性を保っているのだ。  日本では高度成長期に建築された橋やビルなどが完成から四十年を経て、続々と耐用年数の期限をむかえるという深刻な事態へ陥っている。これらの更新は必要不可欠だが、建て替える際には以前よりは寿命の長いものにしたい。数千年の歴史を経て成熟した技術であるコンクリートだが、その技術革新はいまだに続けられている。  法政大学デザイン工学部の溝渕利明教授は、コンクリートの寿命について研究を行っている。溝渕教授は二〇一三年に、前述した高度成長期の建築物の問題について著した『・・・