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米中関係「戦後最悪」の緊張状態に

中国「南シナ海強奪」は止まらない

2015年6月号特別リポート

 世界の国際秩序を左右する実力を備えた米中両大国は緩やかながら「新型大国間関係」の握手の手を離してはいないが、他方の手でいずれかがパンチを放つかもしれない緊張感に包まれている。南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が岩礁を埋め立てる人工島建設のスピードを上げ、周辺十二カイリ以内は当然領海だとみなす行動を続けているのである。このあと中国はどう出るか。

 二〇一三年の十一月に中国は突然東シナ海に防空識別圏(ADIZ)設定の発表を行い、日本を驚愕させた。十二月に北京へ飛んだケリー米国務長官は厳重な抗議をした際に、「この地域とりわけ南シナ海で同じような措置を取らないでほしい」と念を押したはずであったが、中国はどうやら南シナ海でのADIZ設定発表の前に海上で着々と既成事実をつくってしまおうとの腹づもりのようだ。

 前回は、米国が旧式で大型のB52戦略爆撃機を東シナ海上に飛ばして安全保障上の責任を負う姿勢を誇示した。今回はP8対潜哨戒機ポセイドンに一部取材陣を搭乗させ南沙諸島に接近したが、中国側は激しくこれを非難し、「自分たちの行動は主権の範囲内だ」と・・・