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米国の恥部「人種隔離」の実態

「黒人居住区」絶望の拡大再生産

2015年6月号

 米国で、警察の過剰暴力に抗議する黒人の暴動が、昨年から続発している。ミズーリ州ファーガソンからメリーランド州ボルチモアまで続く一連の事件で、底流にあるのは、歴代政権が黒人を白人から隔離し、黒人に過酷な刑事罰を科してきた、隠れた人種差別の歴史である。こうした差別政策の結果、全米各都市の中心部には、黒人貧困層だけで構成される「ゲットー」ができあがり、凶悪犯罪の巣窟になっているばかりか、米経済・社会のブラックホールを形作っている。初の黒人大統領バラク・オバマ率いる現政権は、米国の宿痾である人種問題に対して、解決の糸口も見いだせないまま、最終盤に向かっている。  四月末に暴動が起きたボルチモア。日本では大リーグ「オリオールズ」で知られている。田中将大ら数々の日本人選手が在籍した「ニューヨーク・ヤンキース」と同じアメリカン・リーグ東地区のライバルである。  今回の暴動の舞台は、旧市街の中心にある同球団の拠点「カムデン・ヤード」からほんの数キロ。自動車で十分のところにある。日本の感覚では「なぜそんな都心で?」と疑問を抱くところだが、米国人は当然のごとく、「それなら暴動も仕方ない」と納・・・