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連載

西風 409

都構想騒動で燃え尽きた大阪

2015年6月号

 二百十一万人が参加する壮大な実験が終わった。五月十七日に実施された「大阪都構想」の是非を問う住民投票は、反対が賛成をわずか一万票余り上回り否決された。四月の統一地方選以降、都構想一色になっていた大阪は、燃え尽きている。  橋下徹大阪市長が投票結果判明後に市長退任だけでなく、政界からの引退を正式に表明したことで茫然自失となっているのは大阪維新の会の府議や市議だ。橋下人気だけに依存してきた彼らに明るい未来は見えない。  実は、維新以外に「橋下喪失」を嘆いているのがメディアだ。全国紙府政担当記者が語る。 「橋下市長がいたから、ちゃんと記事を書けた。いくら大阪本社だ、国内第二の大都市だと虚勢を張っても、大阪は四十六ある地方支局の一つに過ぎない」  この七年間は、大阪府民だけでなく在阪メディアも熱に浮かされていたような日々だった。橋下の一挙手一投足を追うために、東京のキー局からもテレビカメラが押し寄せた。市役所の記者クラブには各社がエース級を送り込み、人数も大幅に増えた。政界の台風の目となった四年前に大阪にいた全国紙社会部記者は「どんな話でもあっさり全国版に載った」と振・・・