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経済

伊藤忠が堕ちた中国事業「蟻地獄」

「総合商社首位」への執念が招く悲劇

2015年7月号

 掉尾を飾るのは、岡藤正広社長のこの〝決め台詞〟である。 「目標はひとつ、(総合商社)トップになること」  伊藤忠商事のWebサイトには、「今世紀最大の提携劇」という大仰なアナウンスで始まる動画が掲載されている。一月二十日、伊藤忠がタイの華僑財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと組み、中国最大の国有コングロマリットである中国中信集団(CITIC)へ総額一兆二千四十億円、二〇%出資することに合意した大型資本提携のプロモーションビデオだ。  中国の国有企業が外国企業に二〇%も資本を開放するのは初めて。伊藤忠の投資額は六千二十億円(一〇%分)に上り、これは同社の株主資本の四分の一に相当する。なるほど、乾坤一擲の大勝負に熱が入るのは分かるが、動画は提携三社の常振明CITIC董事長、謝國民CP会長、そして岡藤氏の自画自賛が四分三十八秒にわたって臆面もなく続く。  さながら映画の予告編のようなプロモーションビデオの中で、挑発された総合商社トップ、三菱商事の幹部は苦笑しつつ語った。 「あれは岡藤さんの趣味なのだろう。もともと繊維一筋で、派手なブランドビジネスを得意とし・・・