三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

NHK「ニュースウオッチ9」は死んだ

政権に屈従する「看板番組」の堕落

2015年8月号

「河野を選んだこと自体、会長が目指すNHKを実現する第一歩だった」  安保関連法案をはじめ、安倍政権がらみの重要ニュースが目白押しの中、政権寄りの報道が目立つNHK「ニュースウオッチ9」について、NHKの幹部が明かす。河野とは、大越健介に代わって今春からキャスターを務める河野憲治のことだ。  総合テレビの平日夜九時といえば、看板報道番組枠として国民に浸透しており、最近でも一〇%前後の視聴率を維持。その番組のキャスター自身、NHKの看板であるが、大越から河野への交代劇は、安倍政権の忠犬・籾井勝人会長による更迭にほかならない。政治部出身で、有力派閥の経世会も担当した大越は、原発政策などについて番組で直言することがあり、それが安倍政権の逆鱗に触れたのだ。  籾井は、二〇一四年一月の会長就任会見での従軍慰安婦を巡る発言など公共放送のトップとしての資質を疑問視されているが、経営の基本方針としては「公平公正、不偏不党」と執拗に強調する。だが、その真意は別のところにあるという。別の幹部が漏らす。「誰からも文句をつけられないようにしろ。いつも会長はそう言っている」。〝誰からも〟が政府・・・