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中国経済「新常態」が異常事態に

「市場統制」に舵切る習近平の大罪

2015年8月号

 毛沢東の二つの大罪は言うまでもなく「大躍進」と「文化大革命」であり、中国の歴史に刻まれた悲劇である。その毛主席を崇拝してやまない習近平主席が数十年後、中国人に指弾されるとすればその大罪は「新常態」かもしれない。インフラ建設、不動産投資に極端に依存した中国の高成長路線を見直し、安定成長への転換を図ろうとする新常態は正しい政策であり、中国にとって欠かせない改革ではあった。しかし、実態は成果を急ぐあまり反動化し、市場経済の否定、共産党の統制経済に向かいつつある。 株式市場の抹殺か共産党の敗北か  上海市中心部の高級マンションとなれば、一戸一億円を超えるような物件ばかりだ。一昨年から続く不動産不況、不動産価格の下落のなかで、昨年後半から動きの止まっていた高級物件が六月に入って急に売れ始めたという。不動産不況が終わったわけではない。株式に見切りをつけた投資家が損切りして、資金を不動産市場に戻しているのだ。  上海、深圳の株式市場は習政権のなりふり構わぬ介入によって、暴落を食い止められ、小幅戻しとなっている。「政府は必ず我々のために株価対策を・・・