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歓迎されざる習近平「訪米」

米中「相互不信」は危険水域に

2015年9月号特別リポート

 いまから四十四年前の一九七一年に訪中したキッシンジャー米大統領補佐官と周恩来首相との間で、日本の運命にかかわるような会話を交わした内容が記録として残されている。キッシンジャーが、中国には伝統に基づく普遍的な視点があるのに対して日本の視点は偏狭だと述べた際、周恩来が同調して、日本は「島国の集団だ」と応じた事実は頭に刻んでおいていい。

 習近平国家主席は九月後半から一週間にわたって主席就任以来初の米国公式訪問を行う。歓迎の儀式とホワイトハウスでの晩餐会もある重要な首脳会談だ。課題としては、南シナ海の航行の自由、サイバー安全保障、気候変動、世界経済に関連した中国の経済政策など盛り沢山だが、米国の対応は複雑だ。中国が自由、民主、人権、法治といった普遍的価値観をはっきり異にする国柄だと遅まきながら気付いた米国には厳しい中国批判論が渦巻いているが、オバマ大統領を中心とするホワイトハウスは中国との対立をむしろ回避しようとしているようだ。国務、国防両省の当局者が批判のボルテージを高めているのとは対照的に静かなのである。

 習近平主席が二年前のカリフォルニア・・・