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日本「大敗北」のTPP交渉

官邸「大本営発表」の大噓を暴く

2015年9月号

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、七月末に米ハワイ州マウイ島で開いた閣僚会合が不調に終わり、「漂流」が始まった。仮に九月中に閣僚会合を再開して「大筋合意」しても、その先の最終合意までに詰めなければならない問題は山積しており、オバマ政権下で協定が発効するのはほぼ不可能だ。日米の「二人三脚」でTPPを成立させ、欧州連合などとのメガFTA(巨大自由貿易協定)を連鎖的に締結するという、安倍政権の「ドミノ戦略」は破綻寸前だ。  安倍晋三首相は「あと一回会合すれば合意できる」と、なお前のめりの姿勢を崩さない。「大本営」(官邸)の発表を受けた日本の大手メディアは、ハワイ閣僚会合について「大筋合意先送り、八月に再会合」などと、期待をつなぐ誤報を連発。交渉失敗の原因についても、「某国は過大な要求をしている」(甘利明TPP担当相)とする発言に引きずられ、的外れな「ニュージーランド=戦犯」論を展開した。 通商交渉の大物に「出て行け」  交渉不調の根本要因は、野党共和党が米議会の主導権を握る中で大統領選挙を迎えるという、米国の政治事情にある。本誌七月号で指摘したよ・・・