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連載

皇室の風85

「戦後」のいちばん暑い夏
岩井克己

2015年9月号

 憲法第九条は戦後、形骸化の一途を辿ってきた。内閣法制局が辛うじて残していた「イチジクの葉」が集団的自衛権不行使だったと思う。そのタガが閣議決定で外され、違憲の疑いの濃い安保法制が今国会で成立するなら、この夏は「『戦後』が終わったいちばん暑い夏」と呼ばれることになるのだろう。

 それにしても、体系的な青写真も政策テキストも提示せぬまま、重大な政策転換を矢継ぎ早に打ち出す、乱暴で前のめりの姿勢には怒りを通り越して呆れるばかりだった。

 ようやく得心したのは、最近話題の第三次アーミテージ・ナイ報告“The U.S.-Japan Alliance"(二〇一二年八月)を読んだからだ。米国の「安保マフィア」「ジャパン・ハンドラー」などとも呼ばれる元国務副長官リチャード・アーミテージ、国際政治学者ジョセフ・ナイらが執筆した「戦略国際問題研究所(CSIS)」報告だ。

「3・11の悲劇のために、経済と環境をこれ以上衰退させてはならない。安全でクリーンな責任ある開発と利用によって、原子力は日本の包括的な安全保障に欠かせない要素・・・