三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

Book Reviewing Globe 376

中国に幻想を抱く米国の危うさ

2015年9月号

The China Mirage The Hidden History of American Disaster in Asia James Bradley Little,Brown and Company  日米開戦は、近衛文麿内閣が行った南部仏印進駐に対して、一九四一年八月一日、米国のルーズベルト政権が対日石油禁輸を断行したことが直接の引き金となった。  日本では、四一年春から密かに進められた日米交渉が不発に終わったのも、結局は、中国に親近感を抱くルーズベルトと最後の段階であのハル・ノートを日本に突き付けたコーデル・ハル国務長官が対日強硬姿勢をとったことが、日米開戦へと向かわせる直接のきっかけとなったとの受け止め方がいまなお強い。  たしかに、ルーズベルトは母方の祖父(ウォレン・デラノ)が対中国アヘン貿易で巨万の富を築き、その後も一族が対中貿易と縁が深かったこともあり、中国には並々ならぬ思い入れがあった。ハルもあまりにも硬直的かつ法律家的アプローチで外交に臨んだきらいがある。  しかし、ルーズベルトもハルも対日石油禁輸には慎重論だった。彼らは、それ・・・