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連載

誤審のスポーツ史 10

「幻のホームラン」がまた一本
中村 計

2015年10月号

 誤審による「幻のホームラン」には、大きく分けて二種類ある。スタンドに入っていないのに審判が入ったと一時的に勘違いし、のちに訂正されるケース。もう一つは、本当はホームランなのに、審判によって入っていなかったと断定されてしまうケースだ。

 言うまでもなく、より悲劇的なのは後者だ。が、誤審を正すにあたっては、後者の方がはるかに難しい。それを痛感した試合だった。

 今年九月十二日、阪神甲子園球場。四位の広島カープは、二位の阪神タイガースとぶつかった。シーズンは佳境に入っていた。三位に食い込み上位三チームで争われるクライマックスシリーズ(以下、CS)進出を目論む広島にとっても、リーグ優勝圏内にいる阪神にとっても、もはや落としてもいい試合など一つもなかった。

 そんな中、2-2の同点で迎えた延長十二回表。ワンアウト走者なしから、広島の田中広輔が放った打球がセンター頭上を襲った。外野フェンスを越えるかどうかギリギリの打球は、フェンスの前後、どこかにぶつかって大きく弾み、グラウンド内に落ちた。

 甲子園の外野フェ・・・