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「無防備都市」欧州テロの裏構図

イスラム過激派と「地下組織」の結託

2015年12月号

 十一月のパリ同時多発テロ事件は、ヨーロッパの治安を根本から揺るがす大事件になった。イスラム過激派のテロリストたちはもはや、極秘製造の爆弾ばかりに頼らず、半ば公然と入手できる自動小銃や重火器を使って、欧州のどこでも大量殺戮を行えることが鮮明になった。武器密輸市場は旧ソ連圏と旧ユーゴスラビアを主要供給源に、極右や極左武装集団を介して、イスラム過激派にまで広がっている。思想を異にする暴力組織が、体制への憎悪だけで野合する、凶悪な地下ネットワークを築いており、欧州各国の治安当局の対応は後手に回っている。  パリ事件の八日前の十一月五日。オーストリア国境に近い、ドイツ・バイエルン州のバート・ファイルンバッハという小さな町の、高速道路A8号線上で、白いVWゴルフ車が、検問中の警官の目をひいた。運転していたのは、髪の生え際が後退した、さえないスラブ系の中年男。ルーティン・チェックのはずだったが、ボンネットの下に拳銃が隠してあり、エンジン周辺にも奇妙な細工があった。 「密輸のプロの特別仕様であることは一目瞭然だった」と、ホルスト・ゼーホーファー・バイエルン州首相は後に発表することになる。・・・