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連載

本に遇う 連載198

報道は不自由なのか
河谷史夫

2016年6月号

奇妙な風景が見受けられる。
 日本の「報道の自由」が脅かされているそうである。由々しき事態と言わなければならない。
 発端は「国境なき記者団」という非政府組織が世界百八十の国と地域の「報道の自由」を調べた結果発表にあった。日本は七十二位というのだ。十一位の時もあったが、二〇一四年五十九位、一五年六十一位と下がり続けている。
 朝日新聞の「天声人語」が「72位という順位には記者として自責の念を抑えがたい。報道の将来を思うと、焦燥感がこみ上げる」と書いていた。しかし何でかくも悲壮ぶっているのか分からない。いったい何をそんなに自らを責め、焦りにかられているのか。
 現実にこの記者は「報道の自由」を侵されているのであろうか。何か記事を書こうとして、権力から「圧力」を受け、書きたいことも書けないというのであるか。
 不勉強だから「国境なき記者団」なるものの素性からして知らないし、どんな基準で、どんな調査をしてのことかつまびらかでないが、お前の席次は何番だなどと評定されるがまま恐れ入らされる筋合のものでもあるまい。「外圧」に弱いのは抜き難いわが国民・・・