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社会・文化

「未熟児」が産まれ過ぎる日本

世界第二位の「高率」が映す社会の病理

2016年8月号

 急速な少子化に何ら有効な手だてを打ち出せないまま、人口の右肩下がりに歯止めがかからない日本で、未熟児の割合だけが増加する反比例現象が起きている。最大の原因は女性の晩婚化と日本特有の異様なダイエット志向だ。現代社会の構造変化と病理がもたらした皮肉で、その割合は先進国中で最悪の水準にある。未熟児は障害を併発するケースも多いだけに、ただでさえ逼迫する社会保障費も膨張させていく。どんな姿形で生まれてきても、我が子は誰よりも可愛い。が、いくら「命は地球より重い」と言ったところで、生まれてからずっと植物状態では両親も、小さな生命も長きにわたり底なしの苦悩にさいなまれるのも冷酷な事実だ。頻度が増す未熟児出産をどう抑制していくのか。政府や医療機関は先進的な欧米諸国にならい、早急に手を打たなければ、病床は幼き低出生体重児で溢れかねない。
「モタモタするんじゃない!」「急がないと、ベジ(植物状態)になってしまうぞ!」
 東京都心の総合病院の分娩室に産婦人科医の怒号が飛び交う。通常のスパンである三十七週まで妊娠を継続できずに早産を余儀なくされた未熟児の出産現場。その大半が帝王切開で産ま・・・