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社会・文化

淑女たちが 君臨する英国

「紳士の国」で何が起きているのか

2016年8月号

英国で史上二人目の女性首相に、テリーザ・メイ氏(五十九歳)が就任した。エリザベス女王、上院のフランシス・デ=スーザ議長(女男爵)、スコットランドのニコラ・スタージョン(行政府)首相とあわせ、国家機関のトップは女性ばかり。最大野党・労働党でも、次期党首候補に女性が名を連ねている。「紳士の国」でなぜ、こんなに女性が強いのか。
上流階級を躾ける「ナニー」
英国南西部の古都バース。温泉で有名な街には、「女性強国」のナゾを解く鍵がある。「世界一のナニー名門校」として名高い「ノーランド・カレッジ」だ。
ナニーは「乳母」と訳されるが、英国では乳を与える女性を「ウェット・ナニー」、母親に代わって子育てをする女性を「ドライ・ナニー」と区別する。十九世紀に英国の貴族文化が確立する中で、後者は専門職として発達した。貴族の子供を躾ける以上、自身がマナーや言葉遣い、上流社会の慣例に精通していなければならない。ナニーは英国で国家資格である。
ノーランドは百二十四年の歴史を誇り、三年間のコースを終えると、学士号(BA)が与えられる。
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