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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》抗がん剤利権

保険医療を食い荒らす超高額薬「オプジーボ」

2016年9月号

 肺がん患者に一年間にわたり投与すると、薬剤費が約三千五百万円にも上る超高額薬をご存じだろうか。
 その名は新規抗がん剤ニボルマブ、商品名オプジーボ。自身や身内、知人・友人が肺がんを患えば、きっと耳にするはずだ。死を待つばかりだった患者に、一縷の望みを授けるこの抗がん剤には国民が知り得ない裏の顔がある。
 それはオプジーボを開発・販売する製薬会社、お手盛りの基準で独占状態を画策する日本臨床腫瘍学会、そしてがん治療をする病院の「利権の枢軸」にほかならない。薬剤費の大半は税金を原資とする社会保障費で賄われるだけに濡れ手で粟のごとく、この枢軸の懐に巨費が転がり込むカラクリだ。「自動集金装置」と化した底知れぬ利権構造の闇に迫る。

お手盛りルールで処方権を独占

 オプジーボは小野薬品工業がブリストル・マイヤーズスクイブ社(以下、ブ社)と協力して開発した画期的な抗がん剤で、世界で初めて実用化された。臨床開発の候補となったのは免疫治療に反応しやすい悪性黒色腫。年間の発症数は一千五百~二千人と少なく、治療・・・