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経済

JX・東燃ゼネラル統合の「多事多難」

業界ガリバーで始まる三頭政治の暗闘

2016年10月号

 いずれ不可避の暗闘を誰もが予感している。今は嵐の前の静寂の中でじっと息を殺しているのだ。ただし、一人を除いて……。
「必ずいい会社にしてみせる。頑張りますので、よろしくお願いします!」
 九月八日、証券アナリストとの懇談会に臨んだ東燃ゼネラル石油社長の武藤潤は、いつにも増して饒舌だった。東燃ゼネは、その一週間前の八月三十一日に石油元売り最大手、JXエネルギーを傘下とするJXホールディングス(HD)と経営統合の契約締結を発表したばかり。来年四月に発足する新会社JXTGホールディングスの副社長に内定した武藤は、変革推進委員会委員長を兼務し、発表会見でも二〇一九年度に目指す五千億円以上の実質経常利益(連結)の達成に自信を見せていた。
 この目標自体、低収益にあえぐJXHDを効率経営の東燃ゼネが立て直すことを意味する。武藤は証券アナリストとの内輪の懇談会の気安さも手伝い、新会社の主導権を握る根拠を「統合契約書に書き込んである」と漏らしたのだ。なるほど、契約書にはこうある。
〈供給部門が調整機能を発揮する部門横断的な組織を設置・・・