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経済

《短期連載》豊田家の研究

トヨタの女たちと「政略結婚」

2016年10月号

 引き継がれたのは一千五百五十万株余だったとされている。
 トヨタグループの創始者・豊田佐吉の長男でトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の創業者である喜一郎が他界したのは、いまからおよそ六十四年前の一九五二年三月。その際、佐吉から数えて三代目の豊田家当主となった章一郎(現トヨタ名誉会長)が手にした自社株だ。
 そしてその保有株数はいまだにほとんど変わらない。いや、この言い方は誤解を招く。章一郎は二〇〇三~〇四年と〇五~〇六年にかけての二度にわたり、それぞれ約二百万株ずつを生前贈与の形で自身「あっくん」と呼ぶ息子の章男(現トヨタ社長)に譲渡しているからだ。正確には親子二代で持つ自社株数というべきだろう(章男の保有株数は一六年三月末時点で約四百六十五万株)。
 が、いずれにしても発行済み株式総数が三十三億八千五百九万株(七月末時点)に達するトヨタからみればその持株比率はわずか〇・五%弱。「一%以上の議決権を持つ株主に与えられている株主提案権すらない。半ば無視してもいい存在」(証券筋)だ。それだけではない。グループOB幹部の一人は「佐吉の弟である平吉(トヨタ元監査・・・