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《世界のキーパーソン》セルゲイ・ナルイシキン (ロシア対外情報庁長官)

知日派が「スパイ総元締め」に

2016年10月号

 知日派を対外情報庁(SVR)のトップに起用─。見出しが九月下旬に新聞に載った。ロシアの対外スパイ機関に、ナルイシキン下院議長を起用する人事である。三権の長からスパイの親玉になるのは、日本はもちろん、米国など情報機関が強い国でも考えにくい。しかもこの人は、副首相経験者だ。
 プーチン大統領は当然のことのように、任命の場面をテレビで放映させた。「あなたは議長として、素晴らしい業績をあげた。今度は行政に戻って、ロシアの発展に尽くしてほしい」と語りかけた。前任は首相も務めたフラトコフ氏。首相や議会トップより、スパイの元締めのほうが大切というところに、プーチン氏の価値観、ロシアの国情があらわれている。
 ここ数年は日露文化交流を目的とした「ロシア文化フェスティバル」の責任者として、毎年来日し、安倍晋三首相を含め、歴代の政府要人と会談した。プーチン氏に直結した大物だから、外務省が以前から「日露外交のキーマン」と位置付けたのは当然だ。
 ただ、今回の人事は、外交への配慮より、ロシア政治の一大事件と見た方がよい。有力紙「コメルサント」は先月、新人事に先駆けて、現在複数の・・・