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連載

Book Reviewing Globe 391

「独裁者プーチン」誕生の軌跡

2016年12月号

 いまではすっかり忘れられているが、プーチンが十六年前に大統領として登場したとき、彼はリベラルとして立ち現れたのだった。
 彼は米ロ戦略対話をロシア側で支えたエルツィンの大統領府長官、アレグザンドル・ヴォローシンをそのままその職に留め置いた。
 しかし、プーチンはその後、徐々に独裁者として変貌していく。
 民間石油企業ユーコスの創業者、ミハイル・ホドロコフスキーの挑戦に対して、いわゆるシロビキと呼ばれる旧KGB人脈を駆使して応戦したあたりが最初の変化の兆しだっただろうか。
 ホドロコフスキーはロシア国内のリベラル勢力の寵児だったし、彼らの最大のパトロンだった。しかし、彼は自らの石油ビジネスの拡張についてはあくまで貪欲だった。例えば、ロシアもイラク戦争に参戦すべきだと説いた。それによってロシアの石油会社もイラクの石油の分け前に与るべきだと主張した。また、彼はユーコスをエクソン・モービルかシェブロンに売却する出口戦略を検討していた。
 彼は、ロシアのデュマ(議会)を「買収」してしまったかのような巨大な影響力を持った。議会の要所要所でロビー活・・・