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政治

《土着権力の研究》愛知県 岡谷鋼機

トヨタを凌ぐ「ナゴヤ財界」の重鎮

2017年2月号

 日本の製造業の集積地である東海地方を代表する企業といえば、誰もが思い浮かべるのがトヨタ自動車だろう。売上高は国内断トツの二十八・四兆円、世界販売は年間一千万台を超え、連結従業員三十五万人を抱える、押しも押されもせぬ世界的な大企業である。だが、お膝元の名古屋市を中心とした地元経済界が抱く「企業の格」となると様相が変わってくる。
「嫁に出すならトヨタよりも岡谷」—。名古屋地区にはこんな言葉がある。「岡谷」とは、名古屋市に本社を構える専門商社、岡谷鋼機のこと。文字どおり、大事な娘を任せるならば、トヨタよりも岡谷鋼機の社員のほうがいい、という意味だ。
 同社は自動車メーカーなどに鉄鋼、機械設備、電子部品などを供給する専門商社で、二〇一六年二月期の売上高は七千八百五十四億円、従業員数は約四千九百人。名古屋証券取引所にしか上場しておらず、全国的な知名度はあまりない。事業規模からいえば、トヨタの足元にも及ばない企業が、なぜ「ナゴヤ財界」でそこまでの存在感を持つのか。その理由は、同社の長い歴史と揺るがない堅実さにある。

「五摂家」にも劣らない家格・・・