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経済

実現するか?「マイナス利子」非課税国債

魅力は「相続税免除」と社会保障財源

2017年2月号

 当初は驚きをもって受け止められた日本銀行のマイナス金利政策の導入から一年、世論の激しい反発もなく定着した感があるのは、国民が長い低金利時代に慣れきっていたことに加え、個人の預貯金や個人向け国債には適用されなかったからだ。今、総理大臣の安倍晋三は、「個人にマイナス金利は使わない」という暗黙のルールを破り、燃料切れを起こしたアベノミクスを再噴射させようと、日銀以上の奇策を準備している。買った瞬間に元本割れする個人向けの新型国債「マイナス利子」非課税国債の発行である。
 この構想の原形は、読売新聞主筆の渡邉恒雄が熱心に説いてきた無利子非課税国債だ。購入しても利子がつかず、国は利払いの心配なく資金調達でき、個人はこの国債に関する相続税が免除される「ウィンウィン」のアイデアだと喧伝されてきた。それ以上に、相続税免除の特典が、金融機関に預けられずに家計で眠る「タンス預金」を引き寄せるとの触れ込みに注目が集まった。なにしろ、家計の現金資産は二〇一六年第3四半期時点で七十八兆百五十六億円にのぼり、前期比四・八%増、19四半期連続で拡大中だ。低金利と将来不安の影響で、預金より手元に現金を持ち・・・