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連載

日本の科学アラカルト78

生命の神秘を解明する 「酵素」研究の最先端

2017年2月号

「酵素」は全ての生物に必要な物質だ。体内で生成され、栄養の吸収から排泄、代謝などあらゆる生命活動に関与する。酵素そのものが栄養となることはないが、生体反応を「触媒」する物質だ。酵素は体内で必要な物質を作る機能がメインとして知られているが、このほかにも病気から体を守るために機能する酵素もある。
「制限酵素」は、二本鎖のDNA(デオキシリボ核酸)を切断することで知られている。DNAの特定の塩基配列を認識して、その部分を切断する。体内に入り込んだ細菌から体を守るための「自己防御機構」にかかわるたんぱく質だ。この制限酵素は前述した通り、特定の塩基配列を認識して、細菌などのDNAを素早く切断しなければ自己防御の機能を果たすことができない。塩基配列はそれこそ星の数ほど存在し、その中から特定の塩基配列を効率よく見つけ出す必要がある。
 一般的に、制限酵素はDNAの無作為の場所に結合した後に、その位置をずらしながら微調整して、ターゲットとなる塩基配列を発見し、切断するといわれている。しかしその詳しい機構などについてはまだまだ不明の部分が多い。
 東京大学大学院農学生命科学・・・